妙に暖かい朝。外は雨。 アカガエルの産卵があるかと期待していたが、まだ鳴く気配はない。 ぼく様が未だ生かされているのは、どうも多くの生命を守っているからだそうだ――と、不二子が閻魔様から聞いたという。 また閻魔の話かと苦笑する。 ぼく様は他人様の評価を評価しない人間だった。良いも悪いも。 あー。そんなことより、ケミカルフリーの土壌を、どうやって広げるかだ。 「不二子はん、どうも甲佐の圃場が良くないらしいで」 「良くないとわ?」 昨日、出勤の途中、たばこを買いに普段行かないヒライの弁当屋で、懐かしい甲佐圃場の農家さんに声をかけられた。 「最近見ないが、どうした?」 院に行っていることやら、四の五の説明をする。 今年は甲佐の圃場が管理されておらず、草も切られていないらしい。困っている、という話だった。 状況は読めた。 それより心配なのは、ぼく様が五年を費やして作ったケミカルフリーの田んぼだ。 会社の存続さえ、頭をよぎる。 「そうなんですね。今度見に行ってきます。申し訳ございません」 ぼく様の行くところは栄え、去ると衰退する。 これは、よくあるパターンだった。 ぼく様と付き合うと〇×▽、別れると一様にその女性の運気が開眼する。 ……これも同じ構図なのか? ほんとの話だ。 ぼく様の不思議なオーラなのか。 「なに寝言いってますえ?」 不二子が言う。 「よしろうはんの寝言はリアルやでぇ。なんでも分かってまいますぇ」 へーへー。 分かったところで、最近、大したことはしてないわ。 そう、つぶやく。 「不二子はん、近いうち甲佐へ行ってくるわ。呼んでる気がする」 「へー。うちも行きたいでぇ」 「よっしゃ。一緒に行くで」 ※ここ滅茶勘違いされるので補足、 〇×▽(よかったりわるかったりそうでもなかったりの意)