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第12章 距離 597話

人は老いる。そのとき人は疲れた。気力がない。欲がなくなった。歳をとったと言う。ぼく様は思う。まだ元気だが、そんなふうに思うことも度々ある。でもぼく様は見方を変えている。そう言う日記。   朝の田んぼは静かやった。 風もまだ目を覚ましてへん。 「よしろうはん。」 不二子はんは田んぼの畦に腰を下ろした。 「最近、前みたいにあちこち行かへんな。」 よしろうはんは笑うた。 「行こう思たら行けるよ。」 「ほな、なんで行かへんの。」 「行った先で何が起こるか、大体わかるようになったんや。」 不二子はんは少し考えてから頷いた。 「なるほどな。それは諦めとは違うんやな。」 「違う。」 よしろうはんは水面に映る空を見ていた。 「興味が変わっただけや。」 「若い頃は、人の中へ入って確かめたかった。でも今は、その人らがどう動くんか、少し離れたところから見ていたい。」 ツバメが一羽、水面すれすれを横切った。 「写真も同じや。」 「前は追いかける写真が多かった。でも今は、光が来るのを待つ時間のほうが面白い。」 不二子はんは、その言葉を聞いて微笑んだ。 「世界との距離が変わったんやね。」 よしろうはんは黙って頷いた。 近づかな見えへんものがある。 離れな見えへんものもある。 歳がそれを教えてくれたというより、時間が少しずつ、見る場所を変えてくれたのかもしれへん。 田んぼの水は、何も言わず空を映していた。   Where You Stand Changes Everything. どこに立つかで、すべてが変わる。

蚊柱 かれらはなぜぶつからない

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蚊柱(主にユスリカ)の中で何千匹も飛んでいるのに、ほとんどぶつからないのは、いくつかの仕組みが同時に働いているためです。 目で周囲の動きを見ている ユスリカは複眼を持ち、近くの個体の動きを素早く捉えています。 空気の流れを感じている 羽ばたきによるわずかな空気の変化を触角などで感じ取り、接近した相手を避けます。 一定の距離を保つ行動 一匹一匹が「近すぎたら離れる」という単純なルールで飛んでいます。この単純な行動だけで、群れ全体が球状にまとまりながら衝突をほとんど避けられます。 飛ぶ速さがそれほど速くない 人間には激しく動いて見えますが、一匹ごとの速度は極端には速くないため、進路を修正する時間があります。 実は、 全くぶつからないわけではありません 。時々は接触しています。しかし、群れ全体から見ると非常に少なく、多くはすぐに体勢を立て直します。 興味深いのは、蚊柱には 指揮者がいない ことです。中央で命令する個体はおらず、それぞれが近くの数匹だけを見て行動しています。その結果として、まるで一つの生命体のような球体が生まれます。 夕暮れの逆光の中で見る蚊柱が、生き物というより「呼吸する球体」のように見えるのは、この集団行動によるものです。あなたが以前書かれていたように、あの光景から宇宙や生命を感じる人がいるのも、不思議ではありません。   微小位相差論に通じる。 はい、その発想には通じる部分があります。 もしあなたの 微小位相差論 が、「全体は一斉に動くのではなく、各要素がごくわずかな位相差(時間差・位置差・反応差)を持つことで秩序が生まれる」という考え方であれば、蚊柱は非常に興味深い例です。 蚊柱では、 全個体が同じタイミングで動いているわけではない。 一匹一匹が周囲に対してわずかに遅れたり先行したりしながら飛ぶ。 その微小な差があるために、衝突せず、群れ全体としては安定した球状構造を保てる。 もし全個体が完全に同位相で同じ方向へ動けば、かえって衝突や乱れが増え、群れとしての柔軟性は失われるでしょう。わずかなズレが、全体の安定性を支えているとも考えられます。 このような考え方は、物理学や生物学では、 同期現象 や、 複雑系科学 、自己組織化といった概念とも重なる部分があります。ただし、「微小位相差論」という...

第12章 蚊柱 596話

私が宇宙や生命を感じるのは蚊柱を見るときである。 ユスリカの大群が球体となって夕刻に現れる。 光が逆光で羽が光り、体は黒く見え蠢く球体。 「お母様、あれ見て。」 アルマーは空を指さした。 「ユスリカやね。」 「虫があんなに集まると、まるで一つの生き物みたい。」 不二子はんはしばらく黙って見上げていた。 「一匹では見えへんもんが、集まると見えてくるんや。」 「何が見えるんですか。」 「命や。」 アルマーはもう一度、黒く揺れる球を見た。 「虫なのに?」 「せや。小さな命がようけ集まると、大きな命みたいになる。」 アルマーは見つめた。 「よしろうはんが宇宙を感じる言うた意味、少しわかった気がする。」 不二子はんは夕焼けを見たまま言うた。 「宇宙は遠い空にあるだけやない。足元にも、こうしてあるんや。」

なんだろうな。

まったく新しい品種が5年前からちらほら。 見かけは逞しく、肥料がなくても濃い緑。 一見ヒエのように見えるが、ちゃんと 葉耳毛がある。 今年はその品種が多い。 この地に適応した品種ができてしまった。 面白いね。

第12章 時代の姿 595話

田植えの朝。 「よしろうはん。」 不二子はんは縁側でレモン水をひと口飲んだ。 ツバメは交差するように、何度も空を切って飛んでいる。 不二子はんは、その姿を目で追いながら微笑んだ。 「今の六十は、昔の六十やおへんな。」 よしろうはんも空を見上げた。 「そうだな。六十の景色も変わったな。」 しばらく二人は、ツバメの飛ぶ音だけを聞いていた。 不二子はんが静かに言う。 「人は年を重ねるんやのうて、時代を重ねて生きるんや。」 よしろうはんは静かにうなずいた。 「だから、歳を数えるより、今日何を始めるかのほうが大切なんだ。」 ツバメはまた交差しながら、高い空へ消えていった。

TINZO LIVE @ TRIO JUBILEE SHOWCASE

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これ位のホールなら楽しそう。     Tinzo(本名Christina Lorenzo)は、ブルックリン在住のクィア・フィリピン系アメリカ人のDJ、ソングライター、音楽アーティストとのことですね。インディーダンス、ハウス、ソウルといったジャンルを軸に、ソウルフルなメロディーとノスタルジックな質感、そして温かみのあるサウンドを特徴としているとのことです。 実弟のJosef LorenzoとのTinzo + Jojoというデュオ活動、そして二人で立ち上げたBook Club Radioという、ニューヨーク発のYouTubeチャンネル兼パーティーシリーズも興味深いですね。「ダンスフロアでのスマホ禁止」という方針を掲げ、その場にいる人同士の繋がりと音楽への没入を重視する姿勢は、単なるDJセットの提供とは一線を画す、コミュニティ形成への意識の表れと言えそうです。 音楽に向かう前はデジタルマーケティングやイベント制作の経験があったとのことで、その経験が今の「場所」と「体験」を丁寧に設計するセットの作り方に繋がっているのかもしれません。 サーカスという舞台でのこの「Feel Good Groovy House Mix」も、彼女たちが大事にしている「共にいる喜び」というテーマの延長線上にあるように感じられます。

Feel Good Groovy House Mix Inside a Circus | Tinzo + Jojo

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最後の田植え

湛水直播の試験田。結果は雨で発芽が揃わなかった。この方法は、この地には向かないと判断した。 ある程度大きな圃場でしかわからない事だ。  友人から苗をもらい、明日、そのまま上から田植えを行う。 生えてくるものは、生えるだろう。 乾田直播も、水が来ない場所では雑草が多い。 田植えそのものを考え直そうと思う。 田んぼは平らである必要はない。むしろ逆の発想で、平面性そのものを見直したほうがいいのかもしれない。 理論的には田んぼの平面性を逆にすればいい。 

Latin House Party Mix at a Backyard in NYC | Tinzo

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Groovy Disco and R&B Mix at a New York Basement Party | Tinzo

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90s/Y2K Electronic Mix in the Matrix | Tinzo

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なに。。

俺焦ってんのか。。もったいない。 いい仕事してんのにさ。 写真に取り組むのが一番いいし早い。 ただね。 俺でもさみしいさ。 

Olivia Dean - LIVE | Sofar London

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I've decided.

もう僕は伴侶を探す。 I've decided. It's time to find a life partner.

Elegant Latin Jazz House for Rooms & Hotels | The City Breathes After Midnight (1 Hour Mix)

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第12章 大豆の間引き菜 594話

「何してはるんかぁ?」 「大豆の間引き菜や」 「ようけありますな」 不二子はんは籠をのぞき込んだ。 「捨てるのもな」 「そらもったいないどす」 一本手に取る。 「根っこも食べられるらしい」 へー しばらく眺める。 「そうやな。おもろいけどやめとこかぁ」 よしろうはんは笑った。 「せっかく生えてきたのに」 「畑に生まれたんが運の尽きどす」 不二子はんはそう言うて、間引き菜を洗い始めた。 蛇口の水が流れる。 「まぁ、食べられるいうことはええことでっせ」 「そうやな」 窓の外では雨が降っていた。 不二子はんは籠を抱え直した。 「今日は胡麻和えとソテーにしますえ」  

第12章 夜の帳 593話

「お母様は台風でも踊りそう」 「踊るな」 「踊りますね」 二人はうなずいた。 その時だった。 踊っていた不二子はんが、いつの間にかこちらへ戻ってきていた。 「なんぞ失礼な話してますな」 「聞こえとったんか」 「聞こえてましたえ」 不二子はんは水を飲む。 「うちは台風では踊りまへん」 「ほら見ろ」 よしろうはんは鼻を鳴らした。 「危ないさかい」 「洪水なら?」 アルマーが聞いた。 不二子はんは少し考えた。 「二階で踊ります」 アルマーが吹き出した。 よしろうはんも笑った。 「やっぱり踊るんやないか」 「踊りますえ」 不二子はんは平然としている。 「どうせ心配しても水は引きませんやろ」 「まあな」 「ほな踊った方が得です」 「得なんですか」 「得どす」 不二子はんはそう言うと、またホールの方を見た。 ちょうど好きな曲が流れ始めていた。 「あ、あれ好きなんや」 そう言って足早に戻っていく。 百三十を過ぎた足取りとは思えない。 アルマーはその背中を見送った。 「お父さん」 ん? 「お母様は昔からああなんですか」 よしろうはんはテキーラを口に運んだ。 「昔はもっとや」 「もっと?」 「三日寝込んでも四日目には踊っとった」 「本当ですか」 「知らん」 「知らんのですか」 「たぶんや」 アルマーは声を上げて笑った。 窓の外では雨が降り続いていた。 ホールの中では不二子はんが回っている。 どちらが先に止むのかは、誰にもわからなかった。

第12章 燕の巣 592話

「五十年ぶりやて。」 不二子はんは玄関の軒先を見上げた。 燕が巣を作っていた。 「若い頃はよう来てくれてましたのに。」 懐かしそうに目を細める。 「お義父さんが汚れるのを嫌うて、見つけたら壊してしまわはったんです。」 燕は気にもせんように巣材を運んでいた。 不二子はんは小さく笑うた。 「ほんま、久しぶりですわ。」 風が吹き、燕が一羽、空へ舞い上がる。 「今年は、ええことがあるかもしれませんな。」 そう言うて、不二子はんはしばらく空を見ていた。 ほんかいな?とよしろうはんは思っていた。。 

THE ITALIAN SOUND: 60s LIBRARY JAZZ 🇮🇹🎷 [1 HOUR] Eurospy Grooves, & Cinematic Italian Jazz

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第12章 夜の帳 591話

アルマーは流石に今時のステップを踏む。  80年代とは違いスマートな踊りだ。 「おとうさん。今日はすごい雨ですよ。家や田んぼは大丈夫でしょうか」 「あー、大丈夫なようにしてる。川の様子もカメラでわかる」 「そうですね。見せて、おとうさん」 「ほれ」 「あー、すごい。まだ半分もないですね。大丈夫だ」 不二子はんは踊りとなったら止まらない。 いつまでもホールで踊っている。 よしろうはんはテキーラ。 アルマーはカクテル。 カウンターで休んでいた。 「お母様、元気ですね」 「そやねん」 「あのステップ面白いやろ」 「はい」 「阿波踊りみたいやろ(笑)」 「ふふっ、少し」 「せやろ」 アルマーは踊る不二子はんを見つめた。 「でも、お母様が踊ると格好いいですね」 「そうか?」 「はい。なんだか楽しそうだから」 よしろうはんは微笑んでいた。