研究 レジュメ 2025/05

1. 研究課題(タイトル)
写真の保存性向上に向けた感光材料と支持体の改良研究:ケミカルフォトグラフィーの再構築

2. 研究の背景、問題意識
写真の歴史は約200年と短く、ジョゼフ・ニセフォール・ニエプスによる1822年の「用意された食卓」から始まり、ダゲレオタイプ(1839年)、カロタイプ(1841年)などを経て銀塩写真、デジタル写真へと進化した。感光材料の高感度化やカメラの小型化により、撮影層が拡大し、表現が多様化した。しかし、写真の最大の盲点は保存性の欠如ではないか。油絵や日本画は数百年耐久するが、写真は劣化が早く、顔料であるはずのサイアノタイプは紫外線に弱く、銀塩写真も数十年で退色する。日本の高温多湿環境では生物劣化も問題。写真家として、200年以上の画像耐性を確保する必要性を感じ、感光材料と支持体の未成熟さを克服する研究を行う。

3. 先行研究、参考作例など
ニエプスのヘリオグラフィはアスファルトを感光材料に用い、ダゲールやタルボットは銀塩を基盤とした。サイアノタイプは顔料形成だが、紫外線に弱い。アルビュメンプリントはコントラストや細部描写に優れるが、卵白ゆえ劣化しやすい。参考作例として、ジャン=ウジェーヌ・アジェのアルビュメンプリントは、孤高の作風でパリのベルエポック時代を捉えたが、保存性の低さが課題。絵画技法では、アンドリュー・ワイエスのテンペラ画法復活が古典再構築の成功例。絵画の顔料やバインダー(カゼイン、膠、卵黄)を使って写真に応用可能。
 

4. 研究の手順(方法、章立て)
第1章:文献調査
写真史、感光材料(サイアノタイプ、ソルトプリント)を主に使い絵画技法を取り入れ保存性を調査。

第2章:感光材料の改良実験
サイアノタイプ、ソルトプリントにカゼイン、膠、卵黄、卵白、ポピーオイルを添加したエマルジョン感光膜を作成。光・湿度・生物劣化に対する耐久性を試験。 
 
第3章:支持体の改良
紙以外の支持体を使ってみる。フレスコ、石膏、コットンキャンバス、木材、石、金属、ガラス、金属などで比較。 
 
第4章:新しい感光材料の開発。 
偶然だが、フレスコに2%食塩水を浸し、乾燥後、硝酸銀溶液を塗布すると光のない暗室で感光したものと同じ茶褐色が現れた。出来たものは塩化銀ではなく酸化銀であった。
光を必要としない反応はシルクスクリーンなどでも応用可能ではないか。印刷としての写真。
 
2 AgNO₃ + Ca(OH)₂ → Ag₂O + Ca(NO₃)₂ + H₂O 
フレスコと硝酸銀の反応は酸化銀
  
5. 成果の見通し
サイアノタイプやソルトプリントの感光膜に絵画技法のバインダーを応用し、200年以上の耐久性を持つ感光材料を開発。支持体の生物劣化防止で、日本の環境に対応した写真技法を確立。これらの改良により、深みのある諧調と保存性を両立する新たなケミカルフォトグラフィーを提案。写真家の表現の多様化と、長期保存可能なアーカイブ構築に貢献。次世代の視覚表現として、古典技法であるケミカルフォトグラフィーの再構築が新たな写真文化を創出する。

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