第3章 再び有明の海へ 260話
二人して軽トラで有明海をドライブしていた。久しぶりの休暇。 「なあぁ? よしろうはん、海がえらい青いな、こないな綺麗な海やっけ?」 「おお、さすがやな、有明海は灰色の海が正常なんや、閉鎖的な海に川からの土砂や泥が溜まってるのがこの海の生態系を形成していた。ところがダムの増設や諫早湾の締め切り堤防なんかで条件が変わってきたんや。砂も少なく餌もなくなり、貝も生きれんようになった。魚も減り、透明度が上がったからプランクトンが光合成しやすくなった、そんで赤潮が発生するんや。有明海が青いのは環境問題のサイン。この海は濁ってる事が健全なんや」 「そうやそうや、長崎の諫早湾、ええとこやった。竹崎がにも美味しかった。なのに今では巨大な淡水湖になってもうたわ。有明海は浮泥が混じったグレーやった。それが大事なんやとお父上にも教わりましたで...」 「不二子はん、きょうはうに丼喰うで」 「うに丼どすか。ええどすなぁ、不二子も好物でっさかい、れっつらごー!」 本渡へ渡り、鬼池港から通詞島へ 「なんやら変わったなまえの島どすな」 「うん。なんか昔南蛮貿易のあったころ世界中に漁師が行ってたから通訳者が住んでたとか、でも通訳者と漁師の関係がようわからんけどな(笑)」 「長旅ごくろうさん、さ、ついたで。ちょっと港へ行って海風あたろうや」 「そうしましょ!」 水平線と波、そして光の反射にきらめく海――それは、いつもの有明海であった。 ――あぁ、これや。これやこれや。 この単調な世界こそ、俺が写したい世界や。 覚醒したよしろうはん。 不二子は、何も聞かずとも、その心が見えていた。 よしろうはんは、いつも見てる世界の中から、あんたしか見えへん新しい世界を今見てはる。きっとな。 うちがいつもお側にいてはりますさかい。 ウルフルズ - ガッツやで!! よしろうはん! 不二子は彼の背中にサムズアップを送った。


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