博士論文草稿 2025筆 微小位相差理論と現代写真表現:存在・運動・ 意図の統合的理解 新川 芳朗 所属:京都芸術大学大学院 芸術研究科 芸術専攻 写真映像領域 2025年11月 目次 序論:写真の定義の揺らぎとパラダイム転換 第1章:微小位相差理論の構築 1.1 理論の起源:個人史的背景 1.2 理論の数学的展開 数学的定式化への動機 U(1)ゲージ理論による表現 存在の不変性原理 5層構造への展開 2枚組写真による証明方法論 理論の社会的機能 1.3 理論の基本原理 (1)エネルギー保存の原理 (2)時間の重層性 (3)エントロピーと視点の相対性 (4)差異と運動の必然性 1.4 理論の実践的適用 第2章:写真史的文脈における微小位相差理論 2.1 ドキュメンタリー写真の系譜と限界 2.2 New Topographicsと客観性の探求 2.3 写真家から実践者へ:役割の拡張 第3章:Altered Landscape──変容する風景の記録 3.1 現代日本における風景の急速な変化 3.2 写真技法:古典技法による現代の記録 3.3 写真の認識論的機能 第4章:AI時代における写真の再定義 4.1 写真の定義の歴史的変遷 4.2 真正性(Authenticity)をめぐる議論 4.3 新しい定義:意図の記録としての写真 第5章:理論と実践の統合──持続可能な創造へ 5.1 写真実践と環境実践の接続 5.2 地域社会との協働 5.3 批判的省察と理論の限界 検証可能性の問題 普遍性の問題 還元主義への警戒 実践の持続可能性 結論:写真の未来へ──記録から創造、観察から実践へ 参考文献 謝辞 図版リスト 序論:写真の定義の揺らぎとパラダイム転換 写真は1839年にダゲールによって発明されて以来、「光を記録する技術」として認識されてきた。カメラのレンズを通して捉えた光をフィルムやセンサーに焼き付けることによって、一瞬の現実を固定化することが可能となり、それが絵画や他の視覚表現と明確に異なる本質的特徴となった(Sontag, 1977)。ロラン・バルトは『明るい部屋』において、写真の本質を「それは=かつて=あった」(ça-a-été)という過去の実在性の証明に見出した(Barthes, 1980)。この...